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5分で得する生命保険控除の話 税金の疑問をわかりやすく解説

会社で働いているサラリーマンの方であれば、年末になると会社から渡される緑色の紙に何やら記入したことがあると思います。
特別気にも留めずに氏名や住所だけを記入して提出していたかもしれませんが、実はあなたの手元に戻ってくるお金に関わる大事な紙なのです。

サラリーマンであれ個人事業主であれ、働くとお給料などで所得を得ることになります。この所得はすべて自分の手元に入ると嬉しいのですが、残念ながら所得税や住民税といった税金の課税対象となってしまいます。

また多く稼いでいる人ほど、支払う税金の額だけでなく支払う税金の割合まで多くなります。私たちが支払う税金でまかなわれていることも確かではありますが、少しでも支払う税金を少なくし、手元に残るお金を増やしたいと思うことも当然です。

今回は、少しでも節税するために活用できる「生命保険料控除」についての疑問を分かりやすく解説していきます。

生命保険料控除とは?


生命保険料控除とは、保険会社に支払った生命保険料の金額に応じて、保険料を支払っている人の所得から一定の金額が差し引かれる制度のことを言います。

つまり、税率をかける前の所得が保険料控除によって低くなるため、住民税や所得税が軽減されるようになっているのです。

 

生命保険控除の節税額

 

住民税や所得税の金額は所得によって変わります。

所得税の場合は、課税所得が上がれば上がるほど税率も比例して高くなる超過累進課税システムを採用しています。

課税所得が195万円以下の人は一番低い税率の5%が設定されており、課税所得が4,000万円以上の人は一番高い税率の45%が設定されています。
参考:ファイナンシャルフィールド「所得税は超過累進税率。税率の変わり目は働かないほうが得?」

後述するように控除額には限度がありますが、所得が高い人、つまり税率が高い人ほど節税額が大きくなります。

一方で、住民税については所得に関わらず、一律10%の税金と設定されています。
そのため、個人年金保険料控除の上限である28,000円に対する節税額は、2800円となります。
※引用文献※
AllAbout20thマネー「住民税の計算方法と納付方法をわかりやすく徹底解説【2021年】」

 

生命保険料控除の種類

 

健康保険料国民年金保険などは、日本国民が課された義務として支払わなければいけない社会保険料ですが、これとは別に個人で保険会社を通じて掛ける個人の自由の範囲内にある保険が生命保険控除対象となります。

生命保険料控除は、「一般生命保険料控除」「介護医療保険料控除」「個人年金保険料控除」の3種類に分類されます。

一般生命保険料控除となる対象保険は、生命保険や死亡保険、養老保険など、被保険者の生死が保険金の支払いの起因となる保険のことです。

介護医療保険料控除には、介護保険の他、医療保険やがん保険などが対象です。

個人年金保険料控除は、税制適格特約がセットされている個人年金保険などが対象となっています。1つ目に示した一般生命保険料控除とは別にさらに生命保険料控除の対象になることで、一般に払わなければならない所得税・住民税の額より差し引くことができます。

 

生命保険料控除で直接税金は減らない

 

保険料を支払っているからと言って、直接税金が減るわけではありません。
この生命保険料控除によって減るのは、課税所得の金額なのです。

所得税住民税お給料、つまり、課税所得の金額によって変わることは生命保険控除の節税額で説明しましたね。
課税所得の金額に応じた税率が国で決められており、その税率を課税所得にかけることによって所得税や住民税が算出されます。

課税所得が少なければ少ないほど、所得税や住民税の金額は少なくなるのです。

しかし、課税所得を少なくしたいからと言って、お給料を自ら少なくするなんてことはしませんよね。
そのために、稼いだお給料からできるだけ多くの控除がされれば、課税所得を少なくすることができ、結果的に税負担を軽減できます。

この課税所得から控除される対象の1つに生命保険料控除があるのです。

 

生命保険料控除制度の改正


この生命保険控除の制度は平成22年に税制改正されました。
平成23年12月31日以前に契約した保険と、平成24年1月1日以降に契約した保険では、生命保険料控除においてどのような違いがあるのでしょうか。

 

旧制度と新制度の違い

 

平成23年12月31日以前の契約においては、控除の種類が一般生命保険料控除個人年金保険料控除の2種類しかありませんでしたが、税制改正により平成24年1月1日以降に契約された新制度においては一般生命保険料控除と個人年金保険料控除に加え、介護医療保険料控除が追加されることになりました。

この介護医療保険料控除ですが、元々は一般生命保険料控除に組み込まれていましたが、税制改正により独立して新設されました。

平成23年12月31日以前に新規契約又は更新等を行った保険を「旧制度」と呼び、平成24年1月1日以降に新規契約又は更新等をおこなった保険を「新制度」と呼びます。

旧制度と新制度では、異なる算出方法で控除額が決定されます。

 

旧制度と新制度の生命保険料控除限度額比較

 

所得に応じて支払う税金が変わるように、控除額も支払った保険料の金額で変わります。

支払った保険料の金額は一年単位で計算されます。つまり、その年の1月1日から12月31日までに保険会社に支払った保険料の金額です。

また、保険料を支払えば支払うほど控除額が大きくなるのではなく、控除額の限度が設けられています。

人によっては一般生命保険料控除介護医療保険控除個人年金保険料控除の3種類全ての保険をかけているという人もいれば、そのうちの一つしかかけていないという人もいます。

複数の種類の保険をかけている場合は、全ての合計額に応じた控除額の上限が設けられています。

生命保険料控除限度額<表1>※引用文献※国税庁「旧生命保険料と新生命保険料の支払がある場合の生命保険料控除額」

<表1>で旧制度と新制度のそれぞれの項目の上限額を比べると、新制度の方が旧制度より少なくなっていることが分かります。
これは旧制度と新制度の違いで紹介した「介護医療保険料控除」が追加されたことにより、金額が引き下げられたのです。

しかし、新制度では介護医療保険料控除が追加されたことにより、全体の合計保険料控除における所得税の上限金額は、旧制度の10万円に比べ新制度は12万円と引き上げられています。

これにより、「一般生命保険料控除」「介護医療保険控除」「個人年金保険料控除」それぞれの所得税・住民税の控除限度額の引き下げがあったとしても、複数の種類の保険をかけている場合は、新制度の方が控除できる限度額が多くなります。

 

申告方法別の生命保険料控除限度額比較

 

複数の保険をかけている人は、旧制度に新規契約をした保険もあれば、新制度になってから新規契約した保険を持っている人もいるでしょう。

このような場合は、旧制度だけで申告する新制度だけで申告する新制度と旧制度の合算で申告する、という3つの方法を選択することが可能です。

新旧の契約の保険料に係る控除額を計算して、一番自分にメリットのある申告方法を選択することができるようになっています。

申告方法別の生命保険料控除限度額<表2>※引用文献※国税庁「旧生命保険料と新生命保険料の支払がある場合の生命保険料控除額」

自分が支払っている生命保険の上限金額を計算したら、どの申告方法が自分に一番合っているか、<表2>を確認しながら選びましょう。

 

生命保険控除の対象となる保険は?


自分が契約している保険が、生命保険控除の対象となるのか気になるところだと思います。
生命保険控除の対象となる保険について見ていきましょう。

対象となる保険の範囲は旧制度・新制度共に共通です。

一般生命保険料控除・介護医療保険料控除の場合

保険金の受取名義人が、契約者本人か配偶者、又は6親等以内の血族と3親等以内の姻族である必要があります。

 

個人年金保険料控除の場合

「個人年金保険料税制適格特約※1」を付加している必要があります。

※1 個人年金保険料税制適格特約 とは?

生命保険料控除の種類の3つ目でご紹介した、一般の「生命保険料控除」とは別に契約する、「個人年金保険料控除」を受けることを目的として付加する特約のことを言います。

もし「個人年金保険料税制適格特約」が付加されていない場合には、一般の生命保険料控除証明書になります。

そして「個人年金保険料税制適格特約」の付加には以下の条件を全てクリアしていることが必要です。

  1. 年金受取人は契約者またはその配偶者のいずれかであること。
  2. 年金受取人は被保険者と同一人であること。
  3. 保険料払込期間が10年以上であること。(一時払いは対象外となります。)
  4. 確定年金若しくは有期年金場合、年金開始日における被保険者の年齢が60歳以上でかつ年金支払期間が10年以上であること。

 

生命保険料控除の受け方

少し生命保険控除について分かってきたかと思います。「保険料を支払っているから」と言って控除が受けられると安心してはいけません。

ただ単に生命保険料を保険会社に支払っているだけでは、保険料控除による減税の対象とはなりません。

 

申告しなければ控除されない

 

減税を受けるためには、年末に記入する「年末調整」や「確定申告」を行わなければいけません。

年末調整の紙には氏名や住所以外にも、その年に支払った保険料の金額を記載する欄があります。
ただ金額を記載するだけでは十分ではなく、その金額を証明する書類が必要となります。
その書類は控除証明書と呼ばれる書類で、保険会社から年末になると送られてきます。

控除証明書は、契約している保険会社全てから送付されてくるため、5社の保険会社と契約している場合は、5枚の控除証明書が送付されてきます。

控除証明書が保険会社から届いていない場合やうっかり紛失してしまった場合は、保険会社に連絡すれば再発行をしてくれますので、すみやかに連絡をして手配をするようにしましょう。

ただ、会社の団体保険に加入している場合などは、会社が保険料を把握しているため、控除証明書を添付しなくても構いません。

基本的には個人で生命保険加入をしている人が多いですから、保険会社から送付されてきた控除証明書をもとに、年末調整の紙を自分で記入して申請しなければいけないのです。

 

申告の仕方

 

年末調整の紙にはたくさんの記入欄があって面倒臭く、年に一度しか行わない手続きということもあり、記入方法を覚えるのは簡単ではありません。

しかし、この手続きを行わない限りは、本来支払わなくても良い税金を支払うことにもなりかねませんので、正確に記入する必要があります。

記入する項目は生命保険控除地震保険料控除社会保険料控除小規模企業共済等掛金控除の4つに分かれています。
一番大きな記入欄が設けられているのが生命保険料控除です。

年末調整の紙だけを見ると難しそうに感じるかもしれませんが、保険会社から送付される控除証明書を見れば意外と簡単に記載することができるようになっています。

記載する項目は保険会社の名前保険の種類保険期間契約者名保険金の受取人及び続柄です。
そしてその年に支払った保険料の金額を控除証明書に記載されている申告額から転記します。

複数の保険会社に保険料を支払っている場合はそれらの合計を全て足します。

年末調整の紙には計算式I計算式IIが書かれています。

  • 計算式I・・・新保険料の計算用
  • 計算式II・・・旧保険料の計算用

新保険料の合計と旧保険料の合計を計算式I、計算式IIにそれぞれ当てはめて計算します。

新保険料の合計額を計算式Iに当てはめて算出した金額と、旧保険料の合計額を計算式IIに当てはめて算出した金額の合計をそれぞれ比べ、何れか大きい金額を記入します。
この金額が一般の生命保険料になります。

同様に介護医療保険料と個人年金保険料を埋めていき、夫々の合計を足して算出された金額が生命保険料控除額となるのです。
介護医療保険料は新しく新設された項目ですので、新・旧の区分がありません。

もし、一般の生命保険料の旧保険料だけで100,001円以上の契約があるのであれば、その一つの保険契約だけで限度額に達するので、他の保険契約があってもそれ以上の控除は受けることができないため、申告しても意味がありません。

一度生命保険控除の申告をすると、思っているほど難しくないことが分かると思います。

控除証明書には年末調整の紙に記入しなければならない事項がすべて記載されているため、控除証明書さえ手元にあれば、誰でも簡単に記入することができます。

 

記入漏れや申告忘れなどがあった場合

 

年末調整で生命保険控除の申告をし忘れてしまった!!

そんな人も中にはいるかもしれません。
また、書類を提出した後に、扶養家族が増えたなど、家族構成が変わったという人もいるでしょう。

そのような場合は、会社に伝えれば再申告が可能ですので、記入漏れや申告忘れなどがあった場合には、速やかに会社に伝えるようにしましょう。

ただし、会社が税務署に書類を提出する期限は1月31日と決められていますので、その期限までに間に合うように再申告を済まさなければいけません。

 

1月31日までに間に合わなかった場合

 

もし、期限までに間に合わない場合は、自分で確定申告をすることが可能です。

e-Taxと呼ばれる国税電子申告・納税システムが1月の中旬になると、国税庁のホームページに開設されます。
この画面の案内に沿って必要事項を記入すれば、申告書が簡単に作成できるようになっています。

作成した申告書は印刷して郵送しても構いませんし、e-Taxという電子申告をしても構いません。
e-Taxはパソコンだけでなく、スマートフォンにも対応しており、申告方法がスマート化されています。

 

まとめ


年末調整はサラリーマンにとっては、年に一度の手続きです。しかし、この紙切れ一枚で所得税や住民税を安くすることができるのです。

少しの税金の知識があれば、年末調整の時期に慌てることもありませんし、保険会社から送付される控除証明書を不要物と勘違いして捨ててしまうこともなくなるでしょう。

書類の書き方が分からない、面倒臭い、手間がかかる、控除証明書がどこにあるか分からないから申告しないというのは、不必要な税金を支払っていることになり、勿体ないことです。

せっかくあるお得な制度を無駄にせず、毎年正しく申告するようにしましょう。

ただ、節税を目的に沢山の保険に入ることも良いですが、本当に自分に必要な保険だけに加入するようにしましょう。
節税ばかり頭にあり、気が付いたら不要な保険や保険プランに加入していた、ということにならないように注意してください。

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